憂鬱と哲学(前編)

あつまれ!アラサー不安の森!

どういうわけか世間一般的に、30代を前にした20代後半というのは悩み多き年頃らしい。

さすがに20余年も生きてきたら、大体自分の能力の限界は把握しているし、自分が特別な人間ではないことにもとっくに気づいて、さて、ではこの平凡な人生をいかにして生きていこうかと考える。

仕事はこのままでいいのかしら、そろそろ結婚を考えないと、将来はどういう暮らしをしたい?

これからの人生に対する漠然とした不安や危機感、そんな気持ちと折り合いをつけて、少しでもましな生き方を探っていくのが30手前という年齢ではないかしら。

「生き方」なんてくそ真面目に考えたところでなるようにしかならないのだけど、なんとなく、今考えておかないと、30代40代になったときに、「今まで何してたんだろう……」って思うような気がして、それはそれでとても怖い。

これって「クオーターライフ・クライシス」って名前がついているくらい、20代後半~30代前半の人間によくある感覚らしい。結局のところ平凡な悩みで笑っちゃうんだけど、渦中の人間としては出口が見えない霧の中にいるようで、どっちに進めばいいかわからなくなる。人生の前後不覚。

哲学にふれてみる

最近よく図書館をふらついてます。

学生の頃はよく出入りしていたけど、普通に本を買える社会人になったら行くこともめったになくなっていましたね。どうしても読みたい絶版本のために図書館カードを作ったら、未知のジャンルの本に手軽に挑戦できるという、当たり前すぎる図書館の魅力を再発見しました。ビバ図書館。

そんなときに手にしたのがこれらの2冊。

人生の悩みにぴったりでしょう、哲学って。小難しい理屈をこねくり回してるイメージがあるけど、究極を突き詰めて見える人生観みたいなものもある(んだと思う)。そういうジャンルは倫理学というらしい。

偶然手に取ったこれらの2冊。思いもよらず内容がリンクしていて面白かった。2冊の紹介がてら、悩めるアラサーが少しだけ哲学にふれてみたいと思います。

ソクラテスに聞いてみた

哲学と言えばソクラテス、ソクラテスと言えば哲学。「汝自身を知れ」で有名なお方。

本書は、現代の悩める若者サトル君と、なぜか現代に舞い降りたソクラテスとの会話形式で成り立ちます。明らかに哲学初心者向けで読みやすそうですよね。

テーマは友達、恋愛、仕事、お金、結婚について。誰もが一度は悩むこれらの問題について、ソクラテスはサトル君に疑問を投げかけながら解決の道を探ります。

ソクラテスの主張はひとつ。人生をめぐるもろもろの問題はまったく別々のものに思えて、実は一つの問題につながるのだそう。

それは、「善く生きることが出来ていないために起こる問題」ということ。

人生のあらゆることの解決は、優しく賢く善く生きることであると。そのために「自分にとって善く生きるとはどういうことか(=汝自身を知れ)」を常に問い続けなさいって。

……うーん、「善く生きる」ってなに?

なんとなーく分かりかけた気になったのが、第1章の「本当の友達とは?」というテーマのお話。

サトルとソクラテスの問答で、本当の友達とは、「幸福はともに喜び、不幸は悲しみ手助けしたいと思う、ただただ存在するだけで『善いもの』として愛することが出来る人物」という結論になりました。

そして友達という双方向的な関係が成り立つためには、自分自身も『善いもの』として愛される人物にならなければならない。そういう人物になるためには、「素直で、思いやりにあふれていて、適度に快活で、活動的。自分が自分の欠点に寛大であるのと同じ程度に友人に対しても心を広く持つ。」ことが大事だと。

サトル「……本当にそんな日がくるんでしょうか?」
ソクラテス「くるさ。キミさえその気になればね。キミがいまの自分に満足できないのは、きっと心のどこかで本当の善悪が見えているからだと思う。もっと自分に正直になって、自分のなかの醜い点をあらためることだ。そして身近な人を大切にすることだ。そうすれば、キミの人生はいまよりもずっと豊かで、実り多いものになるはずだよ。」

つまり、「善い友達はどうやったらできるか?」という問題に対する解決策は、「自分自身の内面を善いものにする」ことであり、それすなわち「善く生きる」ことであるということらしい。

……「つまり」とか書いておきながら全然まとまっていない問題。やっぱり分かりかけた気になっただけでした。

そもそも、「自分にとって善く生きるとはどういうことか」ってどうやって探せばいいのよ。自分が重きを置く価値、大切なもの、好きなものはいろいろあるけど、それが「善く生きる」ことにどう繋がるの。それが知りたいのに。教えてください、ソクラテス先生。(私の心の声)

でもソクラテス先生は答えを教えてはくれません。そうやって、自分の内側を探求し向き合い続けて自分にとっての「善く生きる」を探していかなければ、人生の重要な問題は何も解決しないのだそうです。

なるほど、こういうことね。

うふふ、答えのない問いを探し続けて自分と向き合う哲学って大変★

危ない危ない、これ以上考えると袋小路にはまりそうなのでいったんこの辺に。

この本は、各テーマに対する答えがバシッと示されているわけではありませんが(哲学自体そういうもの)、「ソクラテスの主張を現代人の悩みに当てはめるとこんな考え方ができる」っていうのをわかりやすく教えてくれる良書でした。

特に、「何のために結婚するの?」に対するソクラテスの答えは「なるほどーー!!」と頭がもげそうになる(?)くらい納得で、サトル君と同じように「結婚はコスパが悪い」と思ってる人はおそらくハッとするはず。

2冊目の「共感する人」については……長くなりそうなので次の記事に。

頭出しとしては、ここまで書いてきた「自分の内面を探求する」というソクラテス的な思想を、序章でぶった切るなかなか興味深い本でした。ということでこの記事の締めとします。

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